以前、岩波新書(赤)に入っている現内閣総理大臣、菅直人氏の著した「大臣」という本を読んだことがあるが、その中に阪神大震災の時、スイスだかフランスだかのヨーロッパの国からがれきの下に埋もれている人を発見する災害救助犬の派遣の申し出があった時の逸話が書かれていた。通常、生きた動物を外国から入国させる場合、検疫その他の手続きで約1か月かかるそうだが、地震災害という緊急を要するときであるので、当時の厚生省の官僚が各方面と調整に奔走したが、それでも実際に救助犬が入国できたのは地震発生から1週間後で大急ぎで人命を救助する段階をとうに過ぎていたという。
菅氏はこのエピソードをひいて調整が済んだことしか上に上げないボトムアップ式の意思決定の愚かさ迂遠さを嘆いていた。問題が起こった時点でトップに情報を上げて国務大臣級で協議し判断を下せばスピードをもって多くの方の命が助けられたというのだ。
ひるがえって、未曾有の大災害に襲われたこの日本で救助、救援、復興に一番大切なことはいうまでもなくスピードだ。日本国首脳が信念と責任をもって舵取りしてくれれば、乗組員である我々は多少急な舵でもこの大波を乗り越えられるように協力しようと思うが、政府を信頼しすぎでちょっと甘いかな。
大臣